不安に駆られて、震える。彼はこんな時でも平常で、聞こえるのは規則的な心音。


「ねえ。この人、知り合い?あ、叔父さんとか?」

「そう、叔父。その子の叔父なんだ」

「ふぅん」


どうするつもりなのか、何をするつもりなのか。気が気でない。

作動する耳だけに意識を集中させた。


「この子走ってきたよ?」

「はは…困ったものでね、私を困らすのが好きみたいなんだ」

「へぇ。仲悪いわけじゃないんだね」

「も、もちろんだ。小さい頃から知っているからな」


追い返す気が無さそうな彼。

と、そこでハッとした。もしかして私をこの気持ちが悪いオジサンに引き渡すつもりなんじゃないのかと。

――私なんてどうでもいいから。


「っ、」


あらぬ想像をしたのがバレたのか制するように、彼は一度頭をポンと撫でた。

そして言ったのだ。


「ねえオジサン、この辺りで援交してるオジサンじゃないの」


と。確信に満ちたように。