私は慌てて後悔してないと訂正する。

ああ、彼の顔を見るのが怖い。うつむいてしまう。顔を上げたところでいつもと同じ無表情が待っているに違いないのに。

ぎゅっとスカートの裾を握り、喉から音を絞り出す。


「後悔なんてしてないです。私は……ただ……」

「いいよ別に。後悔しててもしてなくても」

「そう、ですよね。お互いが気持ちよくなれればそれでいい。……ですよね?」

「……アンタはこんなこと嫌いだろうけどね」


抑揚のない言葉は何処まで行っても感情など付いてこなかった。

本当に後悔なんてしていない。ただ後ろめたいだけ。悪い事をしている自分が。誰にも言えない事をしているのが。後ろめたいだけ。

それは後悔しているということなのだろうか。

でも、彼がいなくなったら私はまた、苦しいだけの毎日に戻ってしまう。

そんなのはもう、耐えられそうにはなかった。