虚愛コレクション



似ている。私と彼は似ていた。感じるも、根本的には全く違う、似て非なるのだ。


「私の事、嫌いって散々言ってたじゃないですか」


責めるように言ってみるも、彼の様子に変わりはない。淡々と言葉を述べる。


「言ったね。けど、誰かに取られるのは嫌」

「自己中ですね。私だって――……?」


ふと、違和感に気付いた。彼の発した言葉。“誰かに取られるのは嫌”一体何の話だ。私は誰かの物になったつもりなんてない。

彼の物にもしてもらえない私は、私自身の物だ。


「透佳さん、何言ってるんですか?」

「……何だろうね」


ふいっと顔を反らし、言葉を濁す。


「……」


唖然とするしかなくて、分からなくて。なのに手首を撫でる彼が妙に気になった。傷口がある場所を撫でているのは何かの癖だろうか。

場所が場所だからか、“可哀想”なんて感情を抱いた。その後にじわじわやってくるのは確かな悦びだった。