安堵を含めてクスリと笑い、注文して既に置かれていたショートケーキに手を伸ばす。このファミレスには千代とよく来るがケーキを食べるのは初めてだ。

倒さないようにしながらフォークに一口分掬い上げる。


「よくそんな甘いもん食えんね」

「私もそう思ってたけど、食べてると意外と癖になるよ?」

「なる……かぁ?」


根源は彼。何故か糖分の多いものだけは普通の食事に比べて好んで食べているのだ。

そして、よく私に分けてくれるので必然的によく食べるようになった。

荒治療とでも言うのか。最初は苦手だった甘いものもいつの間にか、甘さが癖になるくらいには食べれるようになったのだ。


「神楽くんは見た目に似合わず、苦いのが好きなんだね?」

「見た目にって何それ」


声に出して笑う神楽くんの目の前には真っ黒いコーヒー。ブラックはさすがに私には苦すぎるため、美味しさは分からないのだが、これも荒治療のように飲み続ければ癖になるのだろうか。


「――……」


ザクリと苺を刺した。 だけど、やはり私は甘い方がいい。なんて。毒されているのだろうか。

口に苺を含み、間を置いてから繕ってみせた。