「アンタ、よくあんなのと居れるね。俺なら無理。人をよく見すぎてて、見られ過ぎてて」
ザクッとアイスにスプーンが差し込まれる。剥ぎ取ったそれを口にしながら更に続く。
「あんな笑わない目も、何考えてるか分からない表情も一緒にいて気持ち悪くないの」
「……分からない、です」
首を横に振れば「そう」と呟いた。
彼の目には神楽くんは、そんな風に映っているらしい。不意に彼の見ている風景に興味を持ったが、知る術もない。
まだ、彼の言葉は続いた。
「何考えてるか分かんない人間より、アンタの方がよっぽど好き」
「――……」
余裕振ろうとも、茶化そうとも思わない。思えなかった。
だって、裏を返せば神楽くんの事を“嫌い”と言っているのだから。
人が人に見せる嫌悪は本当は少しだけ、怖い。
同時に私も思われていると思うと今更に怖くなった。
けれど、私はどうあっても彼から離れられないのだ。
夏休み終盤、彼に少し会わない時期が出来たにも関わらず、だ。


