ぐっと込み上げる何かを堪え、手を握り込む。爪が食い込んで痛くともそうしていた。


「思ったんだろうね。手を切るくらいだから私と同じ可哀想な人なのかもしれない。って」


思った覚えはない。だが、もしかしたら彼の言うように本能で思ってしまったのかもしれない。

私はただ、悪い事が見つかった子供のように、俯いてじっと言葉を聞いていた。


「同じように可哀想な人なら、共感して依存しあえるかもしれない」

「……」

「人の感情なんて一概に言えないけどそんなとこなんじゃないの」

「……」

「目が喜んだのは自分と同じように可哀想な人を発見したから。責めてるのは自分をこんな風にした親。同時にどうしようもない自分の事も」


結局俺が導き出した推測に過ぎないけど。と言う言葉は一種の催眠術のようで肯定も否定も出来ずに何故か納得すらしていた。

唯一の真実は愛されたい事だけ。


「この話、全部置いといてもアンタが俺と居れるのはちょっと、何か欠けてるんじゃないの」