理解したときには、私はサーッと血の気が引くのを覚え、持っていた筈の携帯を探し求めた。
確か、鞄の中かと立ち上がろうとすると、服の裾を引っ張られ、またベッドに尻餅をつく形で逆戻り。犯人は彼しかいない。
「なん……「ちゃんと目、ついてんの。そこに充電してる」」
指差されて見れば、ベッドの上に無造作に置かれた携帯があった。彼のではなく、紛れもなく私のだ。
慌てて充電器からそれを引っこ抜き、電話を掛けようとした。が、何故か真っ暗。
試しにボタンを長押しして電源を入れてみると、画面は光出す。
確か私は電源など切っていなかった筈だが。
「……夜中、ずっと電話鳴りっぱなしだったから電源切ったんだよ」
「え、あ、そう、なんですか。すみません」
「ん、別にいいよ」
と言うと後は何も言わない。
黒い髪が布団の中に潜り込むのを見つめてから、そろそろ起動しただろうと画面に目を移す、と。
「!」
いきなり鳴り出す着信音。ディスプレイに写し出されるのは『ママ』の二文字。
私は思わずため息を吐き出し、電話に応じた。


