嘘なんてついてどうにもならないのに、嘘をつく。嫌いな嘘を嫌いな私が、何度も何度も。
「童貞じゃあるまいし、こんなことでヤりたいとか思わないよ」
嘘だからこそ、私は内心ホッとしたのだ。
外と中が一致しないのは皆同じ。
少しだけ力を緩めて、頭を空っぽにした。身を預けて目を閉じた。
音のない、二人だけの今。
他に見るものなんて、見る相手なんていない。
そんな場所がずっと欲しかった。今だけじゃなくてこれからも欲しい。
それがとても心地いいのだ。
「透佳さん……」
名前を意味もなく呼べば次第にうとうととしてくるのを感じた。
小さい子供のようだ。
けれど、彼にしがみついている今はゆらゆら揺れて気持ちよくて、危うく眠ってしまいそうになる。
それは安堵にも似ていて、いつしか私の意識は遠退いていた。


