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彼よりも高い目線、一定のリズムで伝わる振動。
「透佳さんって優しいですよね」
現在の状況と言えば、痛めた足がこれ以上悪化しないようにおぶって貰っている。
プラプラとサンダルを中途半端に足にぶら下げて、彼に身を任せているこの状態。
提案は彼からだ。助け起こしてくれなかったのに、こう言うところは助けてくれるんだななんて意外に思っていた。
「アンタ頭沸いてんじゃないの」
「いいえ?でも、手当てしてくれるんでしょう?こっち、透佳さんの家の方向ですし」
返答をしない代わりに彼は私を背負い直した。ならばと、茶化すように一言言ってやる。
「……透佳さんって、実は私の事好きですよね」
「やっぱり頭沸いてるね。その幸せな頭、どうにかなんないわけ」
確実に呆れられているのだろうが、そんなのには構わず彼の肩に頭を埋めるようにしがみついた。
答えは求めてない。求めない。だって、この上っ面の優しさの答えなんて前から聞いている。彼の家で、帰り道で。
だから、ここに私がいて、ここに彼がいる。
それだけでいい。純粋な甘い感情など何処にもないけれど、濁った感情を聞くよりいいのだ。


