水月夜

やっぱり。


きれいにセットされた髪がボサボサになり、ブラウスが汚れているのは、焼却炉に頭を突っ込んだせいだったのか。


「それで、豊洲さんは見つかったの?」


千尋はあきらめのついた顔で首を横に振った。


「まだ。昼休みまではちゃんといたんだけど、大坪さんに5限がはじまる前にどこかに連れられて以降は全然……」


そこまで言ったところで千尋がはっとなにかに気づく。


なにに気づいたのかはわからない。


ただ、重要なことである可能性は否定できない。


「もしかしたら大坪さんに連れられたところに閉じ込められたんじゃ……!」


そう言ったと同時に千尋が慌てて髪を整えて、ブラウスについた汚れを手で払いはじめた。


これからなにをするつもりなんだろう。


クエスチョンマークを頭上に浮かべる私をスルーして、近くの階段を上りはじめた。


「……って、えぇ⁉︎ ちょ、ちょっと千尋!」


慌てて階段を上って千尋のうしろ姿を追いかけようとしたが、千尋が2階まで上りきる前に校内放送が流れた。