水月夜

ほっと胸を撫でおろす私だったが、なぜか雨宮くんが不満そうな顔をしていることに気づいた。


「あれ? どうしたの、雨宮くん」


「……なんで天馬のことは名前で呼ぶのに、俺のことは名前で呼ばねぇんだよ」


頬杖をつき、視線をそらす雨宮くん。


えっ。天馬くんの“天馬”って、下の名前……⁉︎


全然気づかなかった……。


驚く私に、聖奈はおかしそうに笑った。


「あはは。梨沙、もしかして“天馬”って、名字だと思ってた?」


図星だった。


「だ、だって、教えてくれなかったんだもん!」


慌てて聖奈に言葉を返す私。