テーブル席に座ったあと、隣に座った雨宮くんに尋ねた。


「ん? あぁ、言ってたな」


「そのとき、『水月夜』は不気味に見えたの?」


雨宮くんは一瞬だけ目を見開いたあと、首を横に振った。


「いや、きれいに見えたよ。暗いなとは思ってたけど、夜の風景だったから暗く見えたのかもしれないな」


「そうなんだ……」


つまりそのとき、私と千尋は、雨宮くんが『水月夜』を不気味だと思っていると勘違いしていたんだ。


雨宮くんは『水月夜』がきれいに見えたから、雨宮くんのまわりではなにも起こらなかったのか。


そう思ったあと、あることに気づいた。