「本当ね。もしジュースを持ってくるのが遅かったら、直美がこんな呆然とした顔をしなかったのに」


えっ、私のせい?


私が空気を読まなかったせいで、直美が呆然することになったの?


ふたりとも、ひどいよ。


どうして直美に異変があったりすると全部私のせいにするの?


信用していないとはいえ、同じグループのメンバーに『空気を読めよ』と言われると、余計に胸が痛くなる。


ヒロエと紀子の今のセリフが冗談だったとしても、私の心に深い傷を負ったことに変わりはない。


そう思ったタイミングで、手の甲で視界を邪魔する涙をぬぐい、誰にも聞こえない程度のつぶやきをこぼす。


「私はジュースを持ってきただけなのに……」


今のつぶやきは雨宮くんには聞こえたみたいで、私よりも大きな手のひらで背中を優しくさすってくれた。


「そうだよな、柏木は悪くないよ。誰が悪いとまではいかないけど、志賀と遊佐の言葉はさすがにひどいよな。だから自分を責めないでいい」


優しくさとすようなセリフには、許してくれたんだという安堵の色があった。