水月夜

そう、だったんだ……。


なにも言えない私に、マリコさんはまだ話を続けた。


『他の人にも『水月夜』を渡し、呪いを本物だと思い込ませるために、恭平は『水月夜』が不気味に見える人の家に真夜中に忍び込んだの』


「誰もいない部屋のものを散らかしたり、電気を突然消したり、ですか?」


『えぇ』


マリコさんの言っていることが本当だとしても、疑問がいくつか残る。


暗い場所に白い手が浮かんでいる出来事や、かなしばりに遭う出来事は、生きている人間にはできないことだろう。


心の中でつぶやいたとき、マリコさんが私の正面にやってきた。