やっぱり。


ヒロエと紀子なら直美を囲むと思ったよ。


心の中でため息をつく私を見ようとせず、ヒロエと紀子が直美に話しかけた。


「どうしたの、ポカーンとしてるなんて直美らしくないじゃん」


「そうだよ。あ、もしかして雨宮くんが離れて梨沙のほうに行ったから、梨沙に嫉妬してるの?」


適当なことを言いだす紀子。


直美の反応は嫉妬、とは言えないだろう。


直美は1年のときから緒方先輩に片想いをしているし、雨宮くんに異性として想いを寄せているという話は聞いたことがない。


想いを寄せている相手がいると知っているのに、涙がこぼれそうなのはどうして?


心の中で疑問に思う私に気づかないまま、私に必死に話しかける雨宮くん。


「本当にごめん。柏木に悲しい思いにさせるつもりはなかったんだ。お願い、許して」


その言葉からは雨宮くんの焦りが伝わってくる。


だが、意識は直美たち3人にかたむいているまま。


ヒロエと紀子の会話が再び耳に入る。


「やばいよ、早く直美の意識を現実に引き戻さないと。梨沙ってば空気読んでよね!」