水月夜

だけど、心の中ででも思っていることを言わないと気が済まなかった。


心の叫びは、マリコさんには届かない。


そう思っていたが、私の心の中のつぶやきがマリコさんに届いたのか、言葉を返した。


『恨んでなんかないわ。たしかに私は両親に画家になることを反対され、有名な画家さんたちにけなされた。でも、恨んでるわけじゃない』


もしかして、私の心の声が聞こえている?


そうだとしたら……。


なんで『水月夜』っていう絵を描いたの?


きっと、その質問に答えてくれるはずだ。


そう思いつつ、ロープを手で引っ張る。