誰……?


私の近くでつぶやいているのは誰?


心の中で問いかけたあと、また同じ声が耳に届いた。


『お前を許さない……』


声を聞く限り、女の人だ。


うなり声のようにトーンが低い声だが、声の主が女の人なのは間違いない。


だが、その女の人の姿がどこにもない。


ということは、声の主は亡霊……?


頭の中で推測をしはじめたとき、久保さんがゲラゲラと笑った。


「あははは! すげぇ! 思ってたことが本当に起こるなんてな!」


重々しい空気に包まれているはずなのに、なぜかひとりだけ笑っている。