水月夜

「……はぁ。ここまで来られるとは思わなかったな。教えてあげるよ、なんでここにいるかを」


うしろから雨宮くんが唾を飲み込む音が聞こえたが、気づかないフリをした。


私は返事をする代わりに久保さんを見つめた。


久保さんが話しはじめる。


「じつは俺、室谷マリコっていう女と恋人関係だったんだ」


えっ……。


久保さんがマリコさんと恋人関係だった?


「彼女と出会ったのは、美術の専門学校に進学したときだよ。たまたま席が隣だったから、仲よくなったんだ」


久保さんも美術の専門学校に行っていたんだ。


知らなかった。