水月夜

私が久保さんの言葉を待っていると、近くからドタドタと足音が聞こえてきた。


不思議に思って私と久保さんがそちらに目を向けたと同時に、足音の主が現れた。


「梨沙、ここにいたのか……」


現れたのは雨宮くんだった。


雨宮くんの姿を見て、久保さんは「あっ」と声をあげた。


「君は、梨沙ちゃんの彼氏の……」


「雨宮颯です」


はっきりとした口調でそう言う雨宮くん。


私はそんな雨宮くんを軽くスルーして、再び久保さんに視線を向けた。


「久保さん、答えてください。なんでここにいるんですか?」


その言葉で、久保さんは深いため息をついた。