水月夜

聖奈が信じられないとでも言うような表情をしたあと、雨宮くんが話を切りあげた。


「はい、話はもう終わり! 5限の授業がもうすぐはじまるだろ」


私の手首をパッと離し、自分の席へと歩いていく雨宮くん。


そういえば雨宮くん、カバン持ってきたのかな。


保健室に来たときは、カバンを持っていなかったような気がするんだけど……。


そう思ったそのとき、雨宮くんが短く叫んだ。


「あ、やべぇ! カバン持ってくんの忘れた!」


やっぱり。


私を助けるために急いでいたから、カバンを持ってくるの忘れたんだろうな。


苦笑いを浮かべながら、私は自分の席に座って5限の準備をした。