水月夜

「…………」


「その女子がいったい誰のことか、最初はわからなかった。だけど、柏木ちゃんのことだって友達が言ってたから、すぐにわかった」


「…………」


すごく可愛い女子、か。


自分はたいして可愛くないと思っていたけど、私のことを可愛いと思っていた人はいたんだ。


「ただ噂になっているだけで本当は可愛くないだろうと思って、柏木ちゃんのクラスまで見にいったんだ。そしたら俺は、柏木ちゃんにひと目ぼれしたんだ」


ひと目ぼれ……。


顔立ちが整っていてカッコいい緒方先輩が、私にひと目ぼれ……。


その事実を受け入れるのに、数十秒もの時間を要した。