水月夜

言われたことがないから、自分が鈍感だとは思わなかった。


「……どうして、必要以上に私のことを心配するんですか?」


おそるおそる質問すると、緒方先輩がつらそうな顔をしながらこう答えた。


「柏木ちゃんが好きだからだよ」


私が好きだから……?


その答えが頭の中で何度も再生され、脳に衝撃が走る。


嘘……。


緒方先輩が、私のこと好きだったなんて……。


驚きのあまり、まばたきを繰り返す私に、緒方先輩がさらに言葉をつけ加えた。


「……柏木ちゃんがここに入学してきてから、俺のクラスで噂になったんだ。新しく入ってきた新入生の中に、すごく可愛い女子がいるって」