水月夜

私が蚊の鳴くような声でそう言うと、緒方先輩は私に顔を近づけてきた。


整った顔立ちをしている緒方先輩が視界に大きく映り、心臓が一瞬だけ跳ねあがる。


「……柏木ちゃんが心配だからだよ。柏木ちゃんが死んだら、と思うと落ち着かないんだ」


なぜ緒方先輩がそんなことを考えるんだろう。


私と緒方先輩はそんなに深い関係ではないから、大袈裟なことを考える必要はないのに。


「落ち着かないって……」


「はぁ……柏木ちゃんって鈍感だね。なんで必要以上に心配するのか、教えてあげるよ」


えっ……。


他人に鈍感と言われたのははじめてだ。