水月夜

そこから保健室にたどり着くまで、そんなに時間はかからなかった。


保健室の前に着くなり、緒方先輩は迷わずドアをノックして開けた。


保健室の中には、保健室の先生がいない。


「先生はいないか……。どこかにいる先生をここで待つしかなさそうだな」


そう言って、緒方先輩が奥のほうへと進む。


そして、ベッドがあるところまで来たと同時に、私の手を離した。


「柏木ちゃん、ベッドで寝てなよ。先生が来たら、俺が事情を説明するから」


「はい……」


ここは、緒方先輩に従うしかない。


さっきみたいに、鋭い目つきを向けられたくないから。