水月夜

これ以上私にかまったらダメだよ、先輩。


先輩にまで迷惑をかけることになるから。


必死に止めようとする私に、緒方先輩が少し険しい表情を見せた。


「柏木ちゃんは大丈夫だって言っても、俺は心配だよ。柏木ちゃんが倒れてからじゃ遅いでしょ? だから、おとなしくついてきて」


緒方先輩の鋭い視線が私に突き刺さる。


先輩が、今まで誰かに鋭い目つきを向けたことがあっただろうか。


血に飢えた獣のような、鋭い目つきを。


私が記憶している限り、緒方先輩がそんな目をするところを見るのははじめてだ。


鋭い視線に怯える私を軽くスルーして、緒方先輩は保健室までの道を歩いていた。