水月夜

食堂を出た廊下内に、私と緒方先輩の足音だけが大きく響く。


その中で、緒方先輩は答えた。


「保健室だよ。柏木ちゃんの顔色が悪いから、休んだほうがいいと思って」


緒方先輩が目指す場所は保健室。


だけど、私は風邪をひいたわけではないし、熱が出たわけでもない。


吐き気は風邪よりも症状が軽い。


だから、しばらくすれば症状がおさまるだろう。


それなのに、緒方先輩は私を保健室に連れていこうとしている。


「い、行かなくてもいいですよ! 午後の授業に出られないほどじゃないですから……」


握られていないほうの手を左右に振ってみせる。