ただ『どうしたの』と聞かれただけなのに、なぜか直美は鋭い目つきでヒロエを睨んだ。


鋭い目つきにさせる要素が、ヒロエのセリフにあったとは思えないけど。


そんなことを言っても逆効果であることはさすがの私も理解しているので、黙って直美とヒロエの様子を見ているだけ。


「わ、悪いことはないよ。ごめん直美、べつに直美に恨みがあって聞いたわけじゃないよ!」


直美の鋭い目つきに耐えられなかったのか、慌てて両手を顔の前でブンブンと振るヒロエ。


ヒロエの表情を見ると、嘘がないように見える。


会話に加わっていない紀子はというと。


自分に火の粉が降りかからないように口をつぐんで直美とヒロエを見つめているだけ。


その様子に思わず声をあげてしまいそうになる。


てっきり紀子は、私たちを包んだ重い空気をすぐに破ってくれるのかと思っていたんだけど。


もしかして紀子、ヒロエを犠牲にしているの?


直美にとっての地雷を踏んだヒロエを置き去りにして、自分を優位に立とうと思っているの?