水月夜

心の中でそうつぶやきながらも、箸を動かして食事を再開する。


皮がパリパリしているからあげは大好きなのに、今食べているからあげはおいしく思えない。


やっぱり、雨宮くんのことを考えているからかもしれない。


箸をいったん置いて水を飲んでいると、誰かが声をかけてきた。


「ねぇ、柏木ちゃん」


私に声をかけてくる中で、“柏木ちゃん”と呼ぶ人はひとりしかいない。


「緒方先輩……」


今朝会ったばかりの緒方先輩の顔が視界に映る。


緒方先輩が食堂にやってきたことで、食堂にいる女子がこちらにどどっと集まった。