この教室の中に雨宮くんがいると思うと、教室に入れない。


どうしよう……。


カバンを持つ手を震わせていると、うしろから肩を叩かれた。


「おはよ、梨沙!」


「聖奈……」


うしろにいたのは聖奈だった。


「どうしたの? 教室に入らないの?」


「は、入るけど……」


「入るけど……なに?」


「あ、雨宮くんがいるかもしれないから、入りづらい……」


教室に入れない理由を素直に聖奈に教えた直後、聖奈が目を見開いた。


「えっ⁉︎ もしかして梨沙、雨宮くんとケンカしたの⁉︎」


「いや、ケンカしたわけじゃないんだけど……」