『本当はお土産として『水月夜』を持ってきたわけじゃないのに……』


頭の中で久保さんの言葉が何回も再生されて、まばたきを繰り返す。


その言葉の意味を理解したと同時に、雨宮くんが久保さんの胸ぐらを掴んだ。


「あんた、今なんつった⁉︎ 『水月夜』を渡したのは間違ってた⁉︎ あんたが梨沙を恐怖におとしいれたのか!」


久保さんのつぶやきが雨宮くんにも聞こえていたらしい。


海外旅行に行っていたお土産として、久保さんが『水月夜』を私に渡したことが、私を恐怖におとしいれることとイコールにはならない。


「雨宮くん、久保さんにつかみかかるのはやめてよ!」