水月夜

わざわざ久保さんに聞こえるほどのボリュームでしゃべったのは、久保さんに疑いをかけられるのを防ぐためだ。


私の作戦を雨宮くんはわかっている。


その証拠に、なにかを考えるようなポーズをしてうなり声をあげている。


「うーん。ここには都市伝説がないのかもしれないな……」


と、ここで久保さんが私の隣にやってきて、手を私の肩に乗せた。


「な、なんですか?」


「梨沙ちゃんたちが調べてることって……もしかして『水月夜』のこと?」


バレてしまった。


久保さんに疑われないように、『水月夜』のことを久保さんの前では言わなかったのに。