水月夜

「へぇ、そうなんだ。この街に都市伝説ってあるのかな」


興味津々の様子でうなずいてみせる久保さん。


どうやら雨宮くんは、久保さんを騙すことに成功したようだ。


「わ、私と雨宮くんがここまで来たんですから、ここには都市伝説があるはずですよ〜」


込山に来て目的が『水月夜』についての新たな情報を掴むためだということを、とてもではないが久保さんの前では言えない。


額に小粒の汗を浮かべる私をチラッと見て、雨宮くんは私の手首を軽く引っ張った。


「じゃ、行くぞ」


そう言った雨宮くんが焦っていることに気づかないフリをしながら、私は雨宮くんと久保さんと一緒に歩きだした。