水月夜

でも、電車の中の空気から逃げたくて、ふたりを置き去りにしたことに変わりはない。


「本当にすみません……」


「そんなに謝らないでよ。梨沙ちゃんは悪くないんだから」


久保さんから目をそらし、チラッと雨宮くんのほうを見る。


雨宮くんは腕組みをしながら、眉間にシワを寄せている。


そんなに、私と久保さんが仲よくなることが嫌なのかな。


そう考えたとき、久保さんが私の視線に気づいて雨宮くんのほうを見た。


それと同時に、頭に乗っていた手が離れる。


「君……ずっと気になってたけど、梨沙ちゃんのなに? ただのクラスメイトというわけじゃなさそうだね」


どうやら久保さんは、電車に乗ったときから雨宮くんのことを見ていたらしい。