水月夜

そして、赤くなった顔を見られないように髪の毛で隠した。


と、そのとき、車内にアナウンスが流れた。


『まもなく、込山(こみやま)に到着します』


込山は、私と雨宮くんが降りる予定の駅で、私たちが住む街の隣にある街だ。


車内アナウンスが聞こえたと同時に立ちあがり、出入り口の近くまで歩み寄った。


出入り口には数人の乗客がいたので、その人たちも込山に着いたら降りるつもりなのだろう。


心の中で冷静につぶやいていると、電車がスピードを落として停止した。


込山に着いたとすぐに理解した。


出入り口が開いた瞬間、私は逃げるように電車を降りて駅をあとにした。