そう、私に向かって笑顔で元気よく挨拶してきたのは親友の直美だった。


直美は私の席に来ていた雨宮くんにすぐに気づき、片手を振って挨拶する。


「あっ。雨宮くん、おはよ！」


「あ、あぁ、おはよう、大坪……」


いきなり声をかけられたからか、少し動揺しながら挨拶を返す雨宮くん。


その顔をじっと見つめたが、直美が私のところにやってきたことによって、雨宮くんは逃げるように自分の席に戻った。


この場面は何度も見る。


教室に来ると雨宮くんが私のところにやってくる。


しかし、直美が教室に入ってくると雨宮くんは逃げていく。


なぜ逃げるのと思っているけど、雨宮くんの本音を聞くのが怖くて聞けないでいる。


雨宮くんの行動に疑問を抱く私を置き去りにするかのように、直美がしゃべりはじめた。


「今日、偶然緒方先輩と昇降口で会ったの！ カッコいい緒方先輩だから他の先輩たちと一緒にいるかなと思ってたけど、ひとりで登校してきたって！ 嬉しくなって、ここまで緒方先輩と一緒に歩いたの！」