水月夜

こっちまで顔が熱くなっちゃうじゃん。


心の中でそうつぶやいたあと、近くからヒソヒソと話し声が聞こえてきた。


「ねぇ、目の前の座席に座ってる男の子と女の子、カップルかな?」


「顔赤くしてる〜。初々しくて可愛いね」


「超お似合い〜」


その会話で、私と雨宮くんのことを話しているのだと理解した。


乗客の中で顔を赤くしている人が私たちしかいないので、私たちを見て話していたのだろう。


それにしても、目の前にいる人たちに見られていたとは恥ずかしいな。


さらに顔が熱くなるのを感じる。


自分の顔が熱くなったことに気づかないフリをして、雨宮くんの手を軽く振り払う。