水月夜

と、ここであることに気づいた。


もしかしたら雨宮くんは、久保さんに嫉妬しているのかもしれない。


自分は名字でしか呼んでいないのに、久保さんは私を“梨沙ちゃん”と呼んでいる。


久保さんが私を“梨沙ちゃん”と呼んでいるところを見れば、雨宮くんが嫉妬するのも無理はない。


「……他の男に、下の名前で呼ばれてんじゃねぇよ」


そう思ったとき、ボソッと消え入るような、雨宮くんの声が聞こえた。


その声は私の耳にきちんと届き、両頬に熱が帯びてくる。


「……っ」


そんなこと言わないでよ、雨宮くん。