水月夜

私の視界に映っている雨宮くんは、怒っているような、悲しんでいるような表情をしている。


うるうるとした瞳をこちらに向けていて、悪いことをしたのではないかと錯覚してしまいそうだ。


「……どうしたの?」


首をかしげて問いかけると、雨宮くんが一瞬だけ目をそらして下唇をキュッと噛んだ。


しかし、すぐに私に視線を戻す。


「……電車が来るまでの間、ホームのベンチで柏木の隣に座ってた男は誰?」


どうやら雨宮くんは、久保さんのことが気になっていたようだ。


なんだ、そんなことか。


心の中でほっと胸を撫でおろす。


「久保さんのこと?」