水月夜

体を、雨宮くんのほうとは逆の方向にそらし、再び目を伏せた。


それと同時に発車のベルが鳴り、ドアがゆっくり閉まった。


ガタンガタンと音を立てながら、電車が少しずつ動きだした。


そのときに体が右側にかたむき、頭が雨宮くんの肩に軽くぶつかった。


「ご、ごめん……」


雨宮くんの顔をまともに見ることができず、目を伏せたまま謝る私。


そして、雨宮くんから少し距離をとろうとしたが、雨宮くんに手首を掴まれ阻止された。


「あ、雨宮くん……?」


「柏木……」


手首を掴まれたことで、雨宮くんと視線がバチッとぶつかった。