水月夜

でも、雨宮くんは止めようとする私たちを完璧にスルーしてボソッとつぶやいた。


「……柏木の家に行って、『水月夜』について調べる」


雨宮くんの声が聖奈と天馬くんに届いたかどうかはわからない。


ふたりの反応を見ようとしたが、その前に雨宮くんに引っ張られてお店をあとにした。


そこからはずっと無言だった。


雨宮くんは、すれ違う人たちの注目を集めても振り向くことなく歩き続けていった。


いっぽうの私は、あたりを見まわしながら引っ張られていた。


だけど、雨宮くんを止めることはできない。


だって、『水月夜』の情報をもっと集めたいから。