水月夜

私の背中に視線を浴びせているのが誰かなんて、言葉にしなくてもわかる。


「おい、颯。柏木の言ったこと、本当か?」


私の横をすり抜けて、天馬くんが雨宮くんの肩に手を置いた。


視線を浴びせた雨宮くんはさっと天馬くんから目をそらし、私の手首をグイッと掴んだ。


なにも言わずに出ていこうとする雨宮くんに、天馬くんだけではなく聖奈も慌てる。


「ちょ、ちょっと、雨宮くん!」


私も必死に雨宮くんを止めようと抵抗するが、当然男の人の力にはかなわない。


手首がヒリヒリと悲鳴をあげている。