水月夜

『水月夜』の作者がかつて隣街に住んでいた、か。


聞いただけでは信憑性に欠ける。


だけど、『水月夜』をさらに調べたら他の情報が出てくるかもしれない。


そう思ったところで顔をあげて、雨宮くんの手を握った。


「雨宮くん、『水月夜』の情報をもっと集めよう」


「えっ……」


突然の私の言葉に少しだけ目を見開く雨宮くん。


だけど、私はそんな雨宮くんをスルーして、トイレから出た。


スタスタと早歩きで席に戻ろうとする私に雨宮くんが慌てる。


「待てよ柏木、今日は早く家に帰れって先生に言われただろ。調べるなら明日にしようぜ」