水月夜

さっきからずっとカバンをグイグイ強く引っ張っているくせに、いざ自分が掴まれるとなると急に被害者のような顔をする直美。


それって、自分が悪者にならないようにするためなの?


震えを止めて首をかしげたと同時に雨宮くんが表情を変えることなく言葉を返した。


「大坪、いいかげんにしろよ。いくらこのクラスの女王だからって好き勝手に振る舞うなよ。お前の行動で柏木が傷つくことに気づかないのか?」


雨宮くんは入学したときからずっと私のことを見ていた。


たとえ自分の行動に傷つける要素はなくても、私は傷つくこともある。


私よりも私のことをわかってくれる雨宮くんに心の中で感謝しながら、直美の様子を見てみる。


視界に映った直美を見た瞬間、がっかりした。


「好き勝手に振る舞ってる? それって雨宮くんの目が腐ってるからじゃない? 仮に私の行動で梨沙が傷ついてるとしても私には関係ないから」


なにをしたって自分は悪くない。


そう言っているふうに見えたから。


昨日まで私と接していた姿じゃなくて、無責任な言葉を言う姿が直美の本性だと思った。