直美が気になってチラッと直美の姿を見てみるが、こちらの視線に気づいていないのかスマホをいじったまま。


直美は自分に非がないと思っているのかな。


「それでなに?」


紀子の言葉で、意識を引き戻された。


ちょっとイライラしたような顔の紀子を軽くスルーして、ヒロエが楽しそうに答える。


「緒方先輩が直美を呼びだすってことなかったから、不思議に思ってふたりのあとをついていったの。そしたらなんと、直美は緒方先輩にフラれたの!」


「……っ!」


びくっと体を震わせた。


今朝見た絵の風景が、ヒロエの言葉の中に入っていたから。


ふたりの男女が向かい合っている絵。


それは、直美が緒方先輩にフラれたことを表していたんだ。


私の部屋にある絵は、ただの絵じゃない!


そう思って唇を震わせると、イライラしていた紀子が私に気づいて目を見開いた。


「うわっ! 梨沙、どうしたの⁉︎ めっちゃ震えてるけど……なんかあった?」