空いた席に迷わず座り、私に体を向けながらも顔だけは直美に向けるふたり。


「まったく、直美はなに考えてんのかね」


頬杖をついてため息を吐くヒロエ。


その表情からは、直美を味方するという気持ちがまったく伝わってこない。


紀子も不満げに言葉を吐き捨てる。


「自分の素行の悪さにどうして気づかないんだろうね。わがままで自分勝手なうえに梨沙に謝ろうとしないなんて。直美は本当バカね」


ふたりの声は私たちにしか聞こえていない。


離れていったクラスメイト数人はこちらをチラチラ見ながらも話しかけることはしなかった。


近くにいるクラスメイトに会話が聞こえていない証拠だ。


すると突然、ヒロエが私に顔を向けて身を乗りだした。


「あのさ、直美のことといったら……昼休みに緒方先輩に呼ばれたよね」


「あぁ……そうだったね」


昼休みに教室で昼ご飯を食べていたら緒方先輩が来て、直美を呼んだ。


ヒロエが言わなかったら忘れるところだった。