水月夜

どうすればこのピンチを切り抜けられるだろう。


ぐるぐると考える私など気にすることなく、ヒロエが真剣な表情のまま口を開けた。


「梨沙。直美のこと、どう思う?」


「えっ……?」


攻撃されると思っていたのに、ヒロエの口から出てきた言葉は、まさかの発言だった。


予想外の言葉に目を見開く。


予想していたこととは違う展開になったという表情をしている私に気づいたのか、あたりを見まわしていた紀子がやわらかく微笑んだ。


「もしかして梨沙、私とヒロエになにかされると思った?」


「うん……」


「私たちが梨沙にいじめとか攻撃とかするわけないじゃん。直美じゃあるまいし」


『いじめとか攻撃とかするわけない』


その言葉を聞いて、紀子は私の気持ちを見透かしていたと気づいた。


紀子は私に対していつも適当な反応ばかりする子だったけど、本当は違うのかな。


「の、紀子は直美のことどう思ってるの?」


聞くのは正直怖いけど、気持ちを理解してくれたという嬉しさがあったので紀子に話を振った。