水月夜

まるで自分の周囲を警戒しているみたい。


学校にいる限りは周囲を警戒する必要はないはずなのに、なぜあたりを見まわしているんだろう。


紀子の行動に首をかしげた直後、ヒロエが私に真剣な目を向けてきた。


「梨沙……」


こちらを見つめるヒロエの表情が怖い。


なにか武器を使って私を攻撃する気⁉︎


そう思ったところで目を見開いた。


『覚悟しておきな』


昨日の昼休みに直美に言われた言葉が脳内で再生された。


直美は私をいじめようと、仲間であるヒロエと紀子に話してふたりにいじめをさせようとしているかもしれない。


直美は自分がやられたことをずっと忘れないから。


自分の気が済むまで、直美はヒロエと紀子を利用して私を攻撃するだろう。


覚悟してなかったわけじゃない。


だけど、いざ攻撃されるとなると震えが止まらなくなる。


できることなら、今すぐここから逃げたい。


しかし、ドアの前にヒロエと紀子が立っているので逃げられない。