ごくっと唾を飲み込み、ゆっくり立ちあがった。


立ちあがったときの椅子を引きずる音がやたら耳に響き、びくっと小さく肩を震わせる。


恐怖に支配された私を完璧にスルーして、ヒロエと紀子は私を連れだした。


ふたりの目的の場所に着く前に直美に遭遇したらどうしようという思いを抱きながらも、なんとか会わずに済んだ。


ふたりが私を連れてきたのは家庭科室だった。


天井近くのプレートに【家庭科室】と書いてあるのをぼんやり眺める。


それもつかの間、ふたりは私を強引に家庭科室の中に入らせ、自分たちも一緒に入った。


ドアが閉まったタイミングで、おそるおそるヒロエに話しかけた。


「ね、ねぇ、ヒロエ。話ってなに?」


自分の声が若干震えていることに気づいた。


だけど、一度言った言葉を撤回することができないのでヒロエからの言葉を待つしかない。


そう思いながら、チラッと紀子のほうに目を向けてみる。


紀子は腕を組んで再びあたりを見まわしている。