「おはよう、梨沙!」


「お、おはよう……」


こちらにやってきたのは、友人のひとりの矢畑 聖奈(やはた せな)。


たまに直美からちょっかいをかけられるが、陽気な性格のおかげでいじめのターゲットにはなっていない。


羨ましくなるくらい明るくて、自分の周りにいる人全員を元気にさせる。


太陽を感じさせる笑顔をじっと見つめる私に、聖奈がなにかに気づいた。


「あっ。梨沙、雨宮くんと手つないでるじゃん。もしかして付き合ってるの⁉︎」


うっ、気づいたか。


手をつないでいることはおおっぴらにしたくなかったが、聖奈にバレたからには言うしかない。


口を開けて聖奈に説明をしかけたそのとき、うしろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


反射的に雨宮くんの手を離し、スタスタと自分の席に座った。


「月曜日って憂鬱だわ」


「あー、わかる。学校行きたくないけど親が行けってうるさいからね」


このふたつの声はヒロエと紀子のものだ。


教室に来ても挨拶してくれないことはわかっているのに、なぜか体が自分の席へと動いていた。