なんて、考えている場合じゃない。


すでに教科書とノートと筆記用具を入れたカバンを肩にさげ、階段をおりた。


リビングに入った直後、お母さんがトーストを乗せたふたつの皿を持ってこちらにやってきた。


「あら梨沙、今日も早起きね」


もうお母さんに起こされないようにしないといけないからね。


こくんとうなずき、皿をひとつ受け取った。


トーストをパクパクと勢いよく食べる私に、お母さんは向かい側のほうに座ってニヤニヤと笑みを浮かべた。


「なに?」


「梨沙、なにか嬉しいことでもあったの? 皿を受け取ったときから顔がニヤけてるわよ」


顔がニヤけてた?


自分では我慢しているつもりでも、お母さんにはバレちゃうんだね。


ここは正直に言おうか。


「じつは私、彼氏ができて。それでどうしても嬉しさが隠しきれないんだよね」


そう言ったあとすぐにトーストに再びかじった。


夢中でトーストにかぶりつく私を見て、お母さんが子供のようにはしゃいだ。